




展示
JIJITSU

このこじんまりとした空間には、キッチン、トイレ、ロフトが備わり、一見すると誰でも住めそうなアパートの一室のように見える。
しかし、部屋の半分には白い布で覆われた土台のようなものが佇み、まず座る場所が見当たらない。
床には土ごと置かれた植物、牛乳らしきものが入った瓶、彫刻のように形作られた粘土が点在し、生活感がありながらも、どこか異様な気配が漂う。
来場者には、「かつてUSAGIたちという存在が住処としていたとされる空間の痕跡」が再構築されたものであると説明される。
そして、こう問いかけられる。
「もし、あなたがここに住むとしたら? ここを自分なりに快適に過ごすとしたら、何をするか?」
USAGIたちが残した"らしき"ものの用途や意味は明かされず、それらはただ、そこにある。
来場者は、その空間にあるものを観察し、触れ、試しながら、自分なりの解釈や物語を生み出していく。
ここにあるものは、かつて存在したものなのか、それとも今ここで生まれたものなのか。
その答えを決めるのは、ここにいる一人ひとりの視点と体験である。
フィクションとは、再構築された現実であり、そこに触れることで生まれる新たな認識こそが、自分自身の「自実(Self-reality)」となる。
会場内の作品
Wanted criminals
「Wanted Criminals」 は、指名手配写真のもつフィクション性を再解釈し、デジタル処理を施して新たな文脈に置き換えたポスターシリーズである。
本作では、犯罪者の「像」として機能する指名手配写真をデータとして分解し、ランダムな改変を加えることで、視覚的な明確さを揺るがし、写真が持つ意味や役割を変容させている。
こうして再構築されたポスターは、求人広告やプロモーションビジュアルといった異なるフォーマットへと組み替えられ、元の写真が持っていた機能や権威を逸脱していく。
情報がどのように操作され、異なる文脈の中で受容されるのか——本作は、視覚的な信頼性とその流動性を探る試みである。

会場内の作品
Dream mapping
「Dream Mapping」 は、夢の記録と現実を対比し、その曖昧な境界線を探るインスタレーションである。
1ヶ月にわたる夢の研究をもとに、夢の中で経験した出来事を現実で検証し、その差異を可視化することで、「夢は虚構にすぎず、現実は絶対的なもの」という前提を揺るがす。
本作では、夢の制約を現実で実行した。例えば、実在する犬を研究する教授たちに、夢の中で登場した「オレンジの犬」についての手紙を書くことで、架空の存在を現実に干渉させた。
また、「水槽の中は海であり、海は水槽である」という夢の認識を再構築するため、砂浜から採取した砂と海水を水槽に入れ、海の映像を投影するミニチュア作品を制作。夢の「事実」を物理的な形で表現した。
さらに、夢と現実のルールの違いを記録し、教科書として提示。来場者が実践的に書き込める練習問題も用意し、夢のルールを自ら試し、拡張できる形式とした。








映画
rabbit, habbit, kubid
映画「rabbit, habid, kubid」 は、うさぎたちが言語を通じて世界を構築し、変容させていく物語 である。
彼らにとって、言葉は単なるコミュニケーションではなく、世界そのものを形づくる枠組み である。
しかし、うさぎの母親の死をきっかけに、その哲学は揺らぎ、彼らの思考の変化とともに、彼らの見る世界も変わっていく。
空間、行動、映像の表現がその変化を反映し、言語=世界の再構築 のプロセスが描かれる。






裏展示
JIJITSU
この空間は、USAGIたちの映画 「Rabbit, Habbit, Kubid」 に登場する場所であり、彼らの棲家である。
来場者がこの空間に足を踏み入れ、展示作品——すなわち彼らの持ち物と関わることで、
その様子は知らぬ間に映画の世界の一部として記録され、再構築されていく。
しかし、来場者はここが映画の一部であることを知らない。
ここでの体験は、映画のストーリーに影響を与え、
「見る」存在でありながら、いつの間にか「見られる」存在となる。

